2015年12月24日木曜日

自治体のお金の流れがわかる!RESASに「地域経済循環図」が搭載!

 当ブログで何度かご紹介している「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」に「地域経済循環図」が搭載されました。



 以前、下記エントリーでも触れている仕組みですが、その時から「たぶん、リーサスに搭載されるんだろうなぁ」と思っていたらその通りに。
おそらく、他の仕組みも取り込まれていくのでしょうね。

環境省「「地域経済循環分析」と「環境政策」を軸とした地方創生」
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/blog-post_18.html


 「地域経済循環図」とは?



 都道府県・市町村単位で「地域経済循環」を図示したものです。地域内企業の経済活動を通じて生産された「(1)付加価値」がどの程度労働者や企業の所得として「(2)分配」されたか把握。最終的に、当該分配がどの程度消費や投資に「(3)支出」されたかを分析します。

(1)「付加(生産)価値」分析

(第1・2・3次産業別)×付加価値額
 地域が生産した商品やサービス等を販売して得た金額から、原材料費や外注費といった中間投入額を差し引いた付加価値額を第1~3次産業別に把握できます。企業経営で言うと、「粗利」部分に相当します。

(2)「分配」分析

雇用者所得、その他所得
 地域産業が稼いだ付加価値額がどの程度所得として分配されたかを把握することができます。こちらは、下記2つの所得に分類されます。

1.雇用者所得:
 雇用者に支払われた所得

2.その他所得:
 財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金等、雇用者所得以外の所得

(3)「支出」分析

民間消費額、民間投資額、その他支出 
 地域内の住民・企業等に分配された所得がどのように使われたかを把握することが出来、下記2つに分類されます。

 
1.民間消費額:
 住民の消費等を示す支出額

2.民間投資額:
 企業の設備投資等を示す支出額

3.その他支出:
 政府支出、地域内産業の移輸出入収支額等を示す支出額


 通常の経済分析は「生産分析(※)」に絞られているため、最終的に都道府県・市町村別にどの程度お金が残ったか・地域として経済的に自立出来ているかといった部分までは分析出来ません。
 「地域循環図」では上記(1)~(3)のプロセスとサイクルで分析するため、経済的に自立するためにはどこがボトルネックになっているかといった分析がしやすくなります。
※RESASにおいては上記(1)と同義です。


 北海道の自治体で分析すると・・・


 「まち・ひと・しごと創生本部」の資料を一通り読むと、大体数字の意味もわかるのですが、上記説明だけですと「字がいっぱいで・・・」な気分になると思います(笑)

 道内自治体を例に幾つかアウトプットして見たので、ザラーっと眺めてみましょう。


 まずは、「札幌市」の経済循環図。左上の「地域経済循環率」が95.9%となっています。
この指標は、「生産(付加価値額)÷分配(所得)」で算出され、地域経済の自立度を推し量る数値になります。当該率が低いということは、分配(所得)を他エリアに頼っている・分析対象エリアの付加価値生産額が低いといったことがわかるわけです。

 「生産」部分を見ると、圧倒的に3次産業が高いことがわかりますね。「分配(所得)」 は、「その他所得」で地域外からの流入が3,305億円ありますが、他の道内自治体と比べるとかなり低い比率になっています。
 「支出」は、「民間消費額」で見ると「地域外からの流入」が1,885億円あります。推測ですが、隣接自治体の方が札幌市内で買い物されたり、通勤客がアピアでお弁当を買ったり・・・といった類の市消費支出になる感じですかね。 




 なんとなく「地域経済循環図」の見方もわかってきたので、どんどん他の自治体を見てみましょう。
僕の生まれ故郷、道東の「北見市」における地域経済循環率は80.8%。「札幌市」と比べると15%程低くなっているのは、「その他所得」で「地域外からの流入」が942億円となっています。「北見市」に限らず、道東自治体は交付金や補助金の依存度が高いことが一因と思われます。




 同じく、道東の「網走市」も「北見市」と同じようなグラフになっています。
ただ、「民間消費額」は、「北見市」よりも「地域外からの流入」が多くなっています。「北見市」よりは観光産業が強い部分も影響しているのでしょうか。

 ちなみに、地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が少ない場合は、その差額がグラフでは点線で囲まれた四角で表示され、支出が地域外に流出していることを意味します。逆に、地域内の住民・企業等が支出した金額より、地域内に支出された金額が多い場合は、その差額が赤色のグラフとして表示され、支出が地域外から流入していることを意味します。 



 続いて2016年3月の北海道新幹線開業を控えた「函館市」。「地域経済循環率」は90.4%と道内自治体では比較的高めです。


 
「観光の街」として有名な「小樽市」における「地域経済循環率」は87.8%でした。



 「札幌市」に隣接し、豪雪地帯でも有名な「岩見沢市」。「その他支出」における「地域外への流出」が723億円もあります。




 財政再建に向けて頑張っている「夕張市」。「地域経済循環率」が63.5%と低めなことと、「生産」「分配」「支出」の金額総計が「岩見沢市」と比べても一ケタ少ない点を見ても、財政的に課題があることが推し量れますね。




 最後に、インバウンドがスキー目当てに大挙して押し寄せている「ニセコ町」。「支出:民間投資額」における「地域外からの流入」が43億円もあります。インバウンド客目当てに大手企業がホテルを新設するなど、多額の投資が続いている背景もあるのでしょうね。



 いかがでしたでしょうか。「地域経済の指標」は様々あるものの、毎回、使いにくいなぁと感じていました。この「地域経済循環図」は様々な観点で数字を分析出来るので使い勝手がいいと思います。来年度は、「地方版総合戦略」の具体的な施策を実施する時期でもありますので、事前に細かい検証作業等で活用されてはいかがでしょうか。

>毎回しつこいですが、「RESAS 見れない」で検索されている方へ 
 RESASはグーグルのChrome(クローム)ブラウザでしか使えません。FirefoxやIE、クロームの互換ブラウザ(Chromium)でも動作しませんのでご注意ください。



<RESAS:参考ページ> 
【速報】「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」新機能リリース!!http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/09/resas.html
 
「地方創生☆RESASフォーラム2015」及び「地方創生☆RESAS地域セミナー」開催
(http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/08/resas2015resas.html)

【RESAS分析まとめ】RESASを活用した地方自治体による分析事例募集がスタート!
(http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/07/resasresas.html)


ニセコ町の基礎データをリーサスでサクッと作ってみた(1時間限定で)
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/06/1.html

超簡単&無料!大空町「芝桜公園」の人の動きをアニメーションGIF化っ!
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/05/gif.html

クライアント向け「RESAS(リーサス)勉強会」やってみて感じたこと。
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/05/resas.html

北見市人口データを地域経済分析システム(リーサス)で覗いてみた。
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/05/blog-post_3.html

札幌市の自治体パワーを「地域経済分析システム」で検証 経済活動等編
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/blog-post_96.html

札幌市の自治体パワーを「地域経済分析システム」で検証 経済構造編
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/blog-post_26.html

札幌市の観光データを「地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」で見ると・・・
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/resas_25.html

札幌市の人口データを「地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」でゴニョゴニョしてみた。
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/resas_23.html

(速報!!)「地域経済分析システム(RESAS(リーサス))」がリリース!
http://sapporomkt.blogspot.jp/2015/04/resas.html


<部下の相沢直人のまとめエントリーもよろしくです!>
RESAS活用の分析事例の募集が始まりました
http://designhokkaido.blogspot.jp/2015/07/resas.html) 

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